HUAWEI CONNECT 2026Shanghai · Sep 17 – 19視察 Sep 16 – 18, 2026EEFUL Holdings 視察記

AIネイティブの現在地

中国はどのぐらいAIネイティブになっているのか。それを確かめに行ったHUAWEI CONNECT 2026の三日間を、帰国後にClaudeとの問答で振り返る。問いと答えをそのまま並べ、現地の録音と写真で裏づけた視察記。

語り手 森山穂貴(EEFULホールディングス 代表取締役)聞き手 Claude同行 上浦・桝谷裏付け 現地録音5本(約7時間)を文字起こし、公開情報で事実確認
この記事のつくり方

視察の翌々日、森山はClaudeと向き合って話した。Claudeが問い、森山が答える。答えの中の一言をClaudeが拾って、次の問いにする。その繰り返しで、上海で見たものの輪郭が少しずつ立ち上がっていった。以下は、その往復をほぼそのまま並べたものだ。

Q / CLAUDE
今回の上海行き、そもそもどういう目的意識で行きましたか。
A / 森山
まずAIと介護の掛け算の材料というのはその通り。とはいえ

対話の合間には、現地で録った音声(キーノート2本、会場での会話3本)を文字起こしした「録音より」の囲みと、現地で撮った228点の写真と動画から選んだものを差し込んでいる。録音の中の人名や製品名は、聞こえた通りに書き、確信がないものには「と聞こえる」と添えた。

01 / なぜ行ったのか
QCLAUDE

今回の上海行き、そもそもどういう目的意識で行きましたか。AIと介護の掛け算の材料を探しに行ったのか、ファーウェイとの関係構築そのものが主目的だったのか、あるいは別の狙いがあったのか。

A森山

まずAIと介護の掛け算の材料というのはその通り。とはいえ中国にはまだそんなに介護が発達していないから、ヘルスケア領域、例えば医療でAIがどう活用されているのかを知りたかった、というのが一つ。

実際に僕らもファーウェイのアクセスポイントを活用しながら、IoTと連携した、Qaito(カイト)と連動させたようなIoTを強化していきたいと思っていたから、その具体的なやり方を見たかった、というのがある。

あとは、中国がどのぐらいAIネイティブになっているのかを知りたかった。日本にずっといると感覚値が凝り固まってしまうから、中国を上浦さんや桝谷さんにも見せながら刺激をもらって、日本の中で少なくとも圧倒的にAIネイティブで最先端な取り組みができる会社にしたい、というのが大きな目標。

1

医療でのAI活用を見る

中国は介護がまだ発達していない。だからヘルスケア、とくに医療でAIがどう使われているかを見に行く。

2

AP × IoT × Qaito

ファーウェイのアクセスポイントを軸に、IoTをQaitoと連動させる。その具体的なやり方を見る。

3

AIネイティブ度を測る

日本にいると凝り固まる感覚値を、同行メンバーと一緒にほぐす。圧倒的にAIネイティブな会社にするために。

02 / 復旦中山病院
QCLAUDE

一番期待値が高かったであろう復旦中山病院のラボ見学。実際に見て、日本の介護現場に持ち帰れそうだと思ったものは具体的に何かありましたか。

A森山

復旦病院の方は、どちらかというとIoTが中心で、例えば点滴の重さで実際にどのぐらい減っているかを確認したりとか、そのIoTがファーウェイのアクセスポイントにつながっている状態を見ることができた、というのが一つ。

あとは、いろんなところにディスプレイがあって、いろんなKPIや指標がディスプレイ上に表示されている。そのUI・UX自体がいい、ということだったみたい。

復旦大学附属中山医院のスマート運営センター。大型スクリーンに病院全体の3Dデジタルツインと運営指標
復旦大学附属中山医院の智慧運営中心(IOC)。横長スクリーンに病院キャンパス全体のデジタルツインと運営指標が並ぶ。「いろんなところにディスプレイがある」の一枚
録音より / 会場のヘルスケア展示(03 02:10〜02:15、英語)
  • センサーの通信規格がばらばら。「Some sensors may be using Wi-Fi to connect, some sensors using ZigBee or Bluetooth. So currently, the challenge is how to just use one Wi-Fi, can support different kinds of protocols.」ファーウェイ側は4種類のプロトコルに対応するチップセットで、病棟のセンサーを一つのWi-Fiに収容すると説明した。
  • AI開発は1か月、データ整備が7割。「70% of the time, it's data.」医師との協働なしにはデータが作れない、と。
  • 導入は政策で決まる。「If the government has a policy to push AI in hospitals, there is no choice. It's a policy issue.」中国の公立病院は衛生当局の予算と方針で動く。技術の問題ではなく、政策とマインドセットの問題だと言い切った。
03 / エージェント戦略との重なり
QCLAUDE

録音タイトルに「華為雲のエージェント戦略とマルチモーダルAIモデル発表会」がありますね。ファーウェイがエージェント戦略として打ち出していた内容のうち、EEFULの「AGENTIC AI NATIVEな介護事業」という掲げ方と重なった部分、あるいは逆に「自分たちの考えとは違うな」と思った部分はありましたか。

A森山

基本的には重なっていると思う。特にオープンソースの考え方。ファーウェイだけでなく、中国のIoTは基本的にSDKパッケージが公開されていて、それをもとに外部でも開発できる環境になっている。そこはすごく自分たちの考え方と合っていると思っている。

オープンソースを前提にプロダクトを組んでいく、という考え方自体がまずすごく合っている。QaitoもSDKを公開しているから、これからグローバルでも国内でも、いろんな会社の状態に合わせたQaitoの活用ができるところはいいと思っている。

逆に「違う」というよりは、僕らの方が実は進んでいるのかもなと思ったのは、業界のバーティカルなハーネスというか、エージェンティックAIの開発のところ。ここは割と進んでいると思った。ただこれはどちらかというと、中国ではClaude CodeやCodexがないからこそ、いいハーネスやエージェンティックAIをベースにした働き方がまだ実現できていなくて、少し遅れている部分なのかな、と感じた。

華為雲CEO 周跃峰氏のキーノート。スクリーンに雲海と山、共建Agentic Cloudのメッセージ
2日目キーノート。華為雲CEOの周跃峰(Peter Zhou)氏。録音タイトルの「華為雲智能体戦略と多模態AIモデル発布会」はこのセッション
録音より / 華為雲キーノート(01)
  • 積み上げの順番。Agentic Infra(算力・データセンター)、その上にモデル戦略「百模千態」(00:02:55「百模千態服務於所有的智能體」。多様なモデルを集めるAgentic MaaS)、その上にエージェントプラットフォーム「智果(AgentArts)」、そして「行業AI夢工廠(Industry AI Foundry)」。四層で語られていた。
  • エージェント基盤もオープンソース版がある。「它们的代码90%相似和相同」(00:17:36)。商用版の智果(AgentArts)とオープンソース版「openJiuwen」は9割が同源とされ、中国企業100社超に提供済み。録音で「Open9」と聞こえたのは openJiuwen だった。
  • 「最も開放的なAgentic Cloud」。「华为云我们努力去做最开放的Agentic Cloud」(00:30:38)。締めの言葉も「開放」だった。英語版プレスリリースの見出しも「Building an Open Agentic Cloud」。
  • ゲスト登壇のMiniMax。何佳珊氏(商業化・市場責任者)が、マルチモーダル動画モデル「MiniMax H3」(8月3日にオープンソース公開)を、公開3週間余りで2,400万ダウンロード超、派生モデル300超と紹介。「开源不只是开放模型」(00:15:34)、開発者と一緒に能力を育てる手段だと語った。華為雲とはAgentic MaaSで組む。
録音より / 会場のコーディングツールのブース(03 00:02〜00:08)
  • 案内役の説明。日本ではClaude CodeやCodexのヘビーユーザーが多いが、フロンティアモデルは高い。「だからそういったフロンティアのモデルよりもオープンソースのモデルにみんな移行してるんですよ」(00:02:45)。展示されていたのは、オープンソースモデル(Kimi、DeepSeekと聞こえる)にハーネスとアプリケーションを付けた構成だった。
  • 森山「Claude Codeのハーネスだけを使って、裏側を他のAPIで」。案内役「できますよ。僕はこれでやってます」(00:05:33〜00:05:40)。
  • それでも「今はハーネスで一番(性能が高いのは)まだClaude Codeなんですよ」(00:06:16〜00:06:25)。ハーネスの差を、現地の人も認めていた。
  • 別の場面では「SDKありますかって聞いてもらって」(03 01:44:21)。聞けばすぐ答えが返る、という空気があった。一方で、ByteDanceのモデルはすべてクローズドだとも聞いた(03 02:30ごろ)。開放一色ではない。
04 / どこで感じたか、そして四つの層
QCLAUDE

その「ハーネスがないから遅れている」という見立て、どこで具体的に感じましたか。現地の人との会話の中でなのか、セッションの内容そのものからなのか。

A森山

セッションの内容というよりは、実際に展示されているファーウェイのプロダクトも、ファーウェイのパートナーのプロダクトも見ていて、正直、日本だともうこの程度は当たり前にあるよね、と。いわゆるアプリケーションレイヤーということなんだろうけど、日本だと当たり前にあるものが、これから先端的なものとして外に出ている。そこに僕としては違和感があった。

逆に中国が進んでいる部分は、インフラ。Ascend(アセンド)もそうだし、GPUに関するリテラシーが全体的に高いと思った。それが大きな違い。

だから分けるとすると、インフラがあって、それをもとに作られるLLMエンジンがあって、その次にAIエージェント、その先にIoTがある。日本やアメリカの場合には、GPUはアメリカにあって、インフラはアメリカにあって、アプリケーションレイヤーとしてのLLMもアメリカにあって、ハーネスの部分を日本がやっている。これからIoTが必要になってきている中で、中国の場合にはIoTとインフラの部分が先に進んでいる、という印象を受けた。

Claudeのメモここで初めて「層」が出てきた。インフラ、LLMエンジン、AIエージェント、IoT。この四つを縦に積んで、誰がどこを持っているかを日米と中国で並べると、視察で感じた違和感の正体がそのまま図になる。下はスクロールに合わせて積み上がる。

一つ、書き添えておく。上海の会食で森山が最初に投げた問いは「ハーネスの技術ではOpenAIやAnthropicの方が中国より進んでいるという認識は正しいか」だった(録音02 00:00:30)。帰国後の対話では「ハーネスの部分は日本がやっている」と言っている。米国のハーネスの上で、業界向けのハーネスを日本が組む、と読むのが素直だが、ここは本人に確かめたい点として残しておく。
インフラInfra / GPU・算力
米国中国 Ascend
LLMエンジンLLM engine
米国中国 自前モデル
AIエージェントAgent / Harness
中国 薄い
IoTIoT / 末端のデバイス
中国 先行
Layer 1

インフラ

GPU、算力、データセンター。中国ではAscendを買って自前でクラスタを組む会社が「いっぱいある」と聞いた(録音03 00:40〜)。会場のどこでもGPUの話が通じる。

Layer 2

LLMエンジン

その上に載るモデル。日米ではフロンティアモデルが米国にある。中国は自前のモデルを持ち、キーノートでは「百模千態」、つまり多くのモデルを開放的に載せる戦略が語られた。

Layer 3

AIエージェント(ハーネス)

モデルに手足を付けて仕事をさせる層。EEFULが日々やっている場所。中国ではClaude CodeやCodexが使えないため、ここが薄いのではないか、というのが森山の見立て。

Layer 4

IoT

末端のデバイス。点滴の重さ、バイタル、アクセスポイント。中国はここが先に進んでいた。日本は「これから必要になってきている」。

日本 / 米国

下三層は米国、ハーネスは日本

GPUもインフラもLLMも米国にあり、日本はその上でハーネスを作っている。一番上のIoTはこれから。

「GPUはアメリカにあって、インフラはアメリカにあって、その後アプリケーションレイヤーとしてのLLMもアメリカにあって、ハーネスの部分は日本がやっている」
中国

両端が強く、真ん中が薄い

インフラとIoTが先行し、真ん中のエージェント層が薄い。展示で「日本だと当たり前にあるよね」と感じたアプリケーションが先端として出ていたのは、この形の裏返し。

「中国の場合には結構そのIoTとインフラの部分が先に進んでるのかなっていう印象は受けた」
並べる

凹と凸が逆

日本が強い層と中国が強い層が、ちょうど互い違いになっている。ここからEEFULが中国から取りに行くべき層が見えてくる。

録音より / 算力アーキテクチャのキーノート(04)
  • 問いの立て方が「層」だった。「甚至上百萬個處理器 能夠像一代計算機一樣的工作」(00:00:45)。数百万個のプロセッサを一台のコンピュータのように働かせることが、AI時代の核心課題だと冒頭で述べた。
  • エージェントが前提の設計。人がモデルを呼ぶのは1時間に数回、エージェントは数百回。だから高頻度の呼び出しに耐える算力基盤が要る、という筋道。
  • 数字。モデルのパラメータは1兆から10兆へ、将来は20〜50兆。昇腾960超節点(Atlas 960E SuperPoD、初日に発表)は最大4,096枚のNPU構成(00:09:05)、灵衢(UnifiedBus)の相互接続で通信の遅延を70%減らす(00:08:11)。講演内容は公開されている杨超斌氏(常務董事・ICT BG CEO)の講演と一致する。
録音より / 会食での日中対話(02、通訳付き)
  • 二つの路線。「其實我覺得現在AI就是完全走的兩條路線嘛。以美國為首的、或者是安徽菲克(Anthropicと聞こえる)他走的其實就是一個一元的技術路線。然後現在中國走的一條就是中國自己的算力加模型一個完整的技術路線」(00:01:09〜00:01:22)。通訳はこう訳した。「アメリカのアプローチはAIのポテンシャルを引き出す最大値を示していて、中国のアプローチはもう少し現実的で、足元のインフラからモデルまで、短期的に即効性のあるものをすぐ出す」。
  • 森山の問い。「ファーウェイのインフラ部分の発展が著しい一方で、パートナーの出しているウェブサービスに関しては、日本でも全然余裕であるよねみたいなものも結構見えた。ポテンシャルをどのぐらい引き出せている感じなのか」(00:03:03〜)。PMFしているのかどうかが分からなかった、と続けた。
  • アプリはじゃんじゃん出ている。アプリケーション開発が活発でないのか、という問いへの答えは「じゃんじゃん出てきてる」「パートナーのMCPは超ネイティブ」(00:40〜)。一方で、社内の開発フローは「まだ完全にAIに置き換わっていない」とも。
  • ベンダーロックイン。「日本の場合はベンダーロックインをクリアしないと、そのAI時代に本当にネイティブになることはすごく難しい」(00:41:20)。
分業か、垂直統合か

各レイヤーを別々の会社が持つ中国、
縦に束ねていく日本

森山が最後の問いで口にした「結構面白いなと思った」構造の違い。同じ四層を、誰が持つかで並べ直す。

CHINA

中国

DIVISION OF LABOR / 層ごとに分業
  • IoT先行。SDK公開が前提
  • AGENT薄い。Claude Code / Codex がない
  • LLM自前モデル。百模千態、オープンソース
  • INFRAAscend、SuperPoD、GPUリテラシー

「中国だとパイがでかいからインフラだけでもここまででかくなれる」(録音02)。キーノートでも、華為がインフラとエージェント基盤を、金山辦公がアプリを担う分業が示された。

棒の高さは森山の見立てを図にしたもので、数値ではない。なお、層ごとの分業が進む一方で、ファーウェイ自身は業種別の「軍団」で業界を縦断する組織に再編している(録音01 00:45:37、02 00:09ごろ)。層は分業し、業界は統合する。その二面があることは書き添えておく。

05 / 末端の層で、使えそうなもの
QCLAUDE

EEFULとして中国から取りに行くべきは末端のIoT層ということになりますが、今回具体的に「これは使えそうだ」と思った製品やパートナーは実際にありましたか。

A森山

あった。まずファーウェイのアクセスポイント自体は、すごく有用性が高いものだと思ったし、実際それを早く強化していきたいと思った。

あとはNUBOMED(ヌボメッド、中国名は諾博医療)が出している医療系のIoT。これは自分たちも率先して取り入れるべきだと思った。我々がQaitoでクラウドをやっているからこそ、つなげられる部分が非常に多いと思った。

QCLAUDE

NUBOMEDの医療系IoT、具体的にどういうデバイスでしたか。

A森山

バイタル系もあったし、さっき言った点滴のものもあった。あらゆるものをIoTに進めていく、という意味で。

補足 / NUBOMED(諾博医療)について対話のあとで調べた内容。正式社名は深圳諾博医療科技股份公司(2012年設立、本社は深圳市宝安区、海外ブランドは NuboMed)。病院IoTの統合ソリューション企業で、研究開発から生産、導入、アフターサービスまでを自社で手がける。薬剤・医療材料の全院閉ループ管理(スマート薬品キャビネット、RFID材料キャビネット)、スマート医療カート、スマート病棟・手術室向け製品が柱で、導入病院2,000件超、稼働デバイス10万台超と公表している。輸液監視システムも医療機器として登録済み。華為のエコシステムパートナーで、2026年6月には華為の「星河AI高品質院区網絡」(Wi-Fi 7ゼロローミング、IoT融合)の上に諾博のアプリケーションを載せる協業が発表されている。本社が深圳にあることは、次の節の「深圳を使うと安く作れる」という話と重なる。
スマート病棟の展示パネル。壁掛けのWi-Fiアクセスポイントと点滴監視システム
スマート病棟の展示。ベッドの上に壁掛けのアクセスポイント(AirEngine)、その脇に「IV Fluid Monitor System 智能输液监测系统」と「Smart Patient Locator」。点滴の重さがAPに集まる、あの構図
録音より / アクセスポイントの展示で(03 03:38〜03:43、通訳付き)
  • 森山側の問いは一つに絞られていた。「APでは全く処理されずに、ローデータで(クラウドに)上がっているのか、APで処理されているのか」(03:42:09)。ベッド上の心拍などのデータをどこで処理するのか、動画はどう扱うのか、APはインターネットに繋がるのか、Wi-Fi 7のAPはどうか。Qaitoにつなぐことを前提にした質問が続いた。
  • 別のブースでは、家庭・遠隔医療向けのバイタル計測キットを出す企業が「機器はファーウェイのもので、自分たちは一式のソリューションを提供する」と説明し、医療機器の登録証を8月に取ったばかりで、東南アジアの注文が生産に入ったところだと話した(05 00:20〜)。
06 / ハードウェアの気づき
QCLAUDE

「率先して取り入れるべき」と思ったのは、バイタルや点滴といった監視系のデバイスの方でしょうか。それとも、薬剤・材料の閉ループ管理という仕組みの方でしょうか。

A森山

デバイスの方。持ち込むというよりは、僕らも類似したものは作れるんじゃないか、と思った。

中国に行ってみてすごく思ったのは、かなりアーリーなフェーズからでもハードウェアに率先して取り組む姿勢があること。実際に僕らでも取り組める、開発できるハードウェアはあるんじゃないか、と今回は特に思えた。それは良かったと思う。

QCLAUDE

ソフトウェア企業が自社ハードに踏み込むのは、金型、認証、在庫、不良対応と、失敗コストがソフトとは桁違いです。介護施設という自社チャネルを持っている強みは確かにありますが、それでも「作れそう」と思った根拠は、中国で見た開発スピードの肌感でしょうか。それとも、カイトとつなぐ以上は自社で握らないと意味がない、という戦略的な必然の方でしょうか。

A森山

両方合っていると思う。

QCLAUDE

「作れそう」という肌感の方は、具体的に何を見てそう思ったんでしょうか。

A森山

だって明らかに、こんなシードの会社でそんなハードウェアなんか作れるのか、と思っていて。その後調べてみたら、深圳(シンセン)を使うと結構安く作れるんだよね。それが理由なんだろうな、と思った。

QCLAUDE

日本の介護施設向けとなると、医療機器としての薬機法上の扱いをどう避けるか、あるいは取るかが効いてきます。バイタル測定を謳った時点でクラス分類の話が出てきて、深圳のコスト優位がそこで相殺されかねない。そこも含めて検討した上での「作れる」でしょうか。

A森山

あくまでまだ肌感の段階。

Claudeのメモ / 未検討の論点として残す対話はここで一度止まった。「両方合ってる」「あくまで肌感」。四つ続けて短くなった答えは、まだ決めていないことの正直な形だと受け取っている。日本の介護施設向けにバイタル系のデバイスを出す場合の薬機法上の位置づけ(医療機器に該当するか、該当するならクラス分類と認証の道筋)は、この記事の時点では検討されていない。決まっていないことは、決まっていないと書く。
録音より / 会場での会話(03 02:35〜02:50)
  • 「うちはデータベースとAIエージェントに強みがあるので、入出力のIoTが必要」。会場で森山側が繰り返した自己紹介はこれだった。中国メーカーとのOEM接続、AIグラス、要件定義さえ出せば1週間ほどで試作を出してくれる工場があるという伝聞、エッジで動画データを軽くしたい理由、が続けて話題になった。
  • 案内役の説明にはこうもあった。日本ではオープンソースがあってもセキュリティや責任問題を恐れて高価なサービスを選ぶ。中国は「いいものを使うことが一番、ミスは勉強」。とりあえず出して、フィードバックで回す(03 01:12〜01:19)。
07 / 帰国後に着手すること
QCLAUDE

今回の経験を踏まえて、帰国後に実際に着手すると決めたことは何でしょうか。

A森山

一つはファーウェイとの連携の強化。特にアクセスポイントを中心に、Ascendを活用したローカルGPU、もしくはGPUレンタルによるチューニング。

二つ目は、ハードウェアのライトな開発から始めてみたい、ということ。

三つ目は、思ったよりも自分たち、この日本が取り組んでいるハーネスは、結構グローバルでも戦える可能性があると思っていて、それをSDK含めて現地にカスタマイズすることを前提に持っていくのは、かなりやれると思う。実際、僕らは来週27日からシンガポールに行ってELDEXに出展するけれども、この展示会でもこの前提を持っていけるといいと思った。

あとは、グローバルに対する目線・観点をより強化していかなければいけない。足元でしっかり取り組んでいる日本の介護事業の承継を通じてインフラの持続化に取り組むのはそうなんだけれども、我々がどこにオーナーシップを持っているかというと、日本社会や産業に対してオーナーシップを持っていると思っているから、その中でシェアの奪い合いをしても仕方ない。そうではなくて、この産業が大きくなっていくためにグローバルに出ていくことが、ファーストペンギンとして社会的意義としても重要だと思っている。

ACTION 1

ファーウェイとの連携を強化する

アクセスポイントを中心に。Ascendを使ったローカルGPU、あるいはGPUレンタルによるチューニング。

ACTION 2

ハードウェアのライトな開発から始める

まずは軽いところから。薬機法の扱いは未検討の論点として持ち越し。

ACTION 3

ハーネスをSDKごとグローバルへ

現地でのカスタマイズを前提に持っていく。9月27日からシンガポールへ渡り、ELDEX Asia 2026(10月2〜4日、Suntec Singapore)に出展して、その前提を試す。

ACTION 4

グローバルの目線を強くする

足元の事業承継でインフラを持続させながら、産業を大きくするために外へ出る。ファーストペンギンとして。

08 / 感情が動いた場面
QCLAUDE

今回の四日間で、一番「これは日本に帰ってすぐ誰かに話したい」と思った瞬間はどこでしたか。理屈ではなく、感情が動いた場面です。

A森山

結構難しいな。まずシンプルに、上海の建物でかすぎだろ、というのは思った。

もちろん一方で、日本の建物は非常に綺麗だと思ったけど、このレベルの高さの建物を建てられる都市としての発展具合の差は少し感じた。それは、すぐに来てよかったと思った部分としてはある。

上海中心大厦を真下から見上げる
初日、陸家嘴。上海タワー(上海中心大厦、高さ632m、128階)を真下から。左に上海環球金融中心
A森山(続き)

あとはAIリテラシー。SDKが、どんな人と話しても当たり前のようにあって、それをどうオープンに開発していくのかが言える。それはすごく大事なことだと思った。

あとは、インフラ層、LLM層、アプリケーションレイヤー、IoTレイヤーという感じで分業されているところも面白いと思った。日本の場合は各バリューチェーンの垂直統合がどんどん進んでいくから、そこは違いだと思った。

あとは実際に上海のファーウェイのキャンパスも見学させてもらって、一つの企業としてやるという観点では、すごく次元の違うものだと思った。

ファーウェイ上海練秋湖キャンパスの湖畔パノラマ
2日目午後、ファーウェイ上海研究所(練秋湖キャンパス)。湖を挟んで欧州風の研究棟が並ぶ
A森山(続き)

そこはどう取れるか人それぞれだけど、僕はこの後40年で同じものを作っていけるんだろうか、ということは、作れるかどうか、作りたいかどうかということよりも、作りたいと思った時に作れるような会社ではありたい、と正直思った。それを見てね。

誇らしいと思うし、そういう会社で働けるというのは、そういう会社でありたいと思うから。そこについては、僕らの場合はすごく当たり前の話だけど、爆発的に成長していかなければいけないと改めて鼓舞されたところではあるかな。

作りたいと思った時に、作れる会社でありたい。

会食の席で、こんな言葉も録音に残っている。日本でイノベーションが進まない理由を巡って、「根幹的には、社会の一員としてのオーナーシップが不足しているんだと思う。自己最適で終わっているんですよ」「もう少し広い社会の一員としてのオーナーシップが高まると」(録音02 00:55:46〜00:56:07)。

帰国後の対話で森山が言った「オーナーシップは日本社会や産業に対して持っている。その中でシェアを奪い合っても仕方ない」は、上海の夜に交わした言葉の続きだった。四つの層のどこを取りに行くかという話は、結局、誰のために産業を大きくするのかという話に戻ってくる。

付録 / 記録

事実確認

録音と対話に出てきた固有名詞と数字を、公開情報(華為公式、企業公式、報道)で照合した。確認できたものだけを載せる。確認できなかったものは本文で「と聞こえる」のままにしている。

HUAWEI CONNECT 2026 会期は2026年9月17〜19日、上海世博展覧館(A館)と上海世博中心(B館)。テーマは「Advancing the Agentic World 智启新未来」。EEFULの視察は9月16日夜の会食から18日まで。huawei.com
初日キーノート 汪涛(華為副董事長・輪値董事長)「智启新未来,打造智能世界的硅基黑土地」。昇腾960超節点(Atlas 960E SuperPoD、最大4,096枚のNPU、近接パッケージ光学)を発表。huawei.com
灵衢(UnifiedBus) 華為の相互接続アーキテクチャ。2025年に灵衢2.0を公開。録音04の内容は杨超斌(常務董事・ICT BG CEO)の講演と一致する。huawei.com
華為雲キーノート 9月18日、周跃峰(華為董事・華為雲CEO)「共建Agentic Cloud,共赢行业智能体时代」。Agentic Infraの4要素(高效Token、增强记忆、通智一体化调度、安全自治)、Agentic Infra採用顧客3,500社超。huawei.com
灵衢昇腾950智算集群服务 録音で「950超節点」と聞こえたサービスの正式名称。9月30日に中国、11月30日に海外で商用。technode.com
智果(AgentArts)と openJiuwen 華為雲のエージェントプラットフォームの商用版とオープンソース版。中国企業100社超に提供済み、海外は12月30日に商用開始。両者が9割同源という説明は2026年6月の報道にもある。録音の「Open9」は openJiuwen。ifeng.com
行業AI夢工廠(Industry AI Foundry) 智慧医療、具身智能、科学計算、智能製造、智慧金融の5専区が稼働。新設は政務智能専区とAI硬件専区。qq.com
MiniMax H3 2026年8月3日にオープンソース公開。約3週間で2,400万ダウンロード超、派生モデル300超(同社2026年中間決算)。登壇は何佳珊(商業化・市場責任者)。MiniMaxは2026年1月9日に香港取引所に上場。minimax.io
金山辦公 吴庆云(副総裁・企業事業部総経理)が登壇。華為雲のAgentic Infraと智果AgentArtsの上に、WPS 365とWPS Comateで業務エージェントを構築。huawei.com
復旦大学附属中山医院と華為 2025年9月17日に「智慧医療全球様板点」を共同発表。「8+24」のスマート医療シナリオ、1本院+9分院の運営協同、放射科の読影効率50%向上。智慧運営中心(IOC)はデジタルツイン基盤。eqs-news.com
中山医院×聯影智能の医療エージェント 2025年5月に6つの智能体を共同発表(胸部一扫多查、介入手術、外科手術、電子病歴、客服、質控管理)。胸部CT1回で73種の異常を検出。jfdaily.com
NUBOMED(深圳諾博医療科技) 2012年設立、深圳市宝安区。導入病院2,000件超。華為「星河AI高品質院区網絡」のエコシステムパートナー(2026年6月)。support.huawei.com
華為の病院向けWi-Fi 「Wi-Fi 7零漫游解決方案」。中核APの AirEngine 6776-26HD は院内網・外部網・IoTの3ネットワークを1台に収容し、内蔵IoTモジュールで BLE 5.4・星閃(NearLink)、USBドングルで RFID・ZigBee に対応。e.huawei.com
華為練秋湖研発中心 上海市青浦区金沢鎮。敷地約1.6平方キロ、延床約206万平方メートル、総投資100億元超、研究開発人員3万人超を収容。2024年7月に全面竣工、同年10月から入居。構内は環状軌道の「紅色小火車」が8駅を周回する。shanghai.gov.cn
「華為は車を造らない」 2018年の董事常務委員会決議で明記、2020年のEMT決議で再確認、2023年3月31日に任正非署名の決議で再度確認(有効期限5年)。会食で聞いた「不造車」の背景。sina.com.cn
軍団 2021年4月の煤鉱軍団を皮切りに業種別の「軍団」を設立し、2025年3月の医療衛生軍団を含め20超。会食で聞いた業種別組織はこれを指す。leiphone.com
盤古のオープンソース化 2025年6月30日に盤古7Bと盤古Pro MoE 72Bを公開。2026年6月のHDC 2026で openPangu 2.0 を発表。huawei.com
DevEco Code / DevEco CLI 2026年6月12日のHDC 2026で発表。OpenCodeを拡張したHarmonyOS向けAIコーディングエージェントとCLI。オープンソース。gitcode.com
ELDEX Asia 2026 2026年10月2〜4日、Suntec Singapore Convention & Exhibition Centre。eldexasia.com
上海中心大厦 高さ632m、128階。展望台直通エレベーターは三菱電機製、定格秒速18m。mitsubishielevator.com
制作ノート
森山とClaudeの対話(2026年9月20日)→録音5本を文字起こし(約7時間)→写真・動画228点を一枚ずつ確認→録音と照合して「録音より」を作成→この記事

本文の問い(Q)はClaudeが立て、答え(A)は森山の言葉をそのまま載せている。整理や言い換えはしていない。同行メンバーの受け止め方に関する項目は、本人の意向で記事から外した。写真と動画は現地で撮った228点から選んだ。

録音の文字起こしには誤認識が多く含まれる。とくに中国語の固有名詞(灵衢、昇腾、超節点、盤古など)は同音の別字で出力されることがある。本文では公開情報で確認できた正式名称に置き換え、確認できなかったものは「と聞こえる」とした。照合の結果は上の「事実確認」にまとめた。