ICC KYOTO 2026

AI時代のICCカタパルトのスライド

公開リハーサル最下位から、カタパルト・グランプリ優勝までの37日

2026年9月2日

7月27日、ICCサミット KYOTO 2026 の「カタパルト公開リハーサル」。Canvaで作ったスライドを持って登壇し、グループA 7組中の7位、採点は1点でした。そこから本番までの37日、準備のほとんどを Claude と一緒にやり直しました。9月2日、カタパルト・グランプリで優勝。この記事は、プログラムを書いたことがない人にも分かるように、「実際に何を、どう頼んだか」を中心に書きます。

7→優勝7/27 公開リハ最下位
9/2 グランプリ優勝
37作り直しに使えた日数
ほぼ毎日Claudeと
83→57枚スライド枚数
構成は3回作り直し
5職員の証言映像
大阪で撮影・字幕付き
0本番中の外部通信
電波がなくても動く
16AI読み上げ音声
台本を直すたび作り直し

最下位の日から、何があったか

先に、日付だけ並べておきます。

  1. ICC KYOTO 2026 カタパルト公開リハーサル。Canva製のスライドで登壇。グループA 7位、採点1点。
  2. スライドを「Canva」でも「PowerPoint」でもなく、文字のリストとそれを画面にする仕組みで作ることに決める。同じ日の夜、構成をゼロベースで組み直す(83枚から64枚へ)。
  3. 通し練習を録音して、そのままClaudeに渡す。「文字が小さい」「AIという言葉を連呼している」「▲2.2%と言われても実額が分からない」を反映。
  4. 全編の視点を「職員」に統一した第3稿が本番版になる。
  5. 大阪の現場で撮影。職員インタビュー4本を文字に起こし、証言5本を映像スライドにする。
  6. 音が出ないバグを修正。ブラウザの実機で「開幕は無音、各スライドで音量が上がり、離脱で戻る」まで確認。
  7. 読み上げ練習ページ(タイマー、経過時間、暗記モード)を追加。
  8. AI読み上げ音声はこの日で16版目。
  9. 当日。会場でType-Cにつなぐと動画が固まる。音声の出し方を変えて回復。カタパルト・グランプリ、優勝。

道具はAIですが、決めたのは全部自分です。Claudeがやったのは、その決定を数時間で形にして、通して、直すことでした。以下、何をどう頼んだかを、順に書きます。

やり方 1指摘は録音、画面は録画。どちらも、そのまま渡す

リハーサルや通し練習で人からもらう指摘は、メモを取りません。その場の録音を、そのままClaudeに渡します。Claudeが文字に起こし、指摘を一覧にして、「どのスライドの、何を、どう直すか」まで落とし込みます。私はそれを見て、やる・やらないを決めるだけです。

録って、そのまま渡す
通し練習の録音
画面録画
「どうせ、
変わらない」
Claude
文字に起こす
一覧にする
直し方まで出す
指摘の一覧
文字が小さい
AIと連呼している
▲2.2%の実額がない
1分半長い
Claude直しました。確認してください
録って、渡す:録音でも画面録画でも、こちらは渡すだけ。指摘が一覧になり、直したところに印がつく
この録音、通し練習でもらった指摘。全部書き出して、どのスライドをどう直すかまで出して録音ファイルを添えて頼む。文字起こしも一覧化も、こちらは何もしない

8月10日の通し練習では、こういう指摘が出て、こう直しました。

録音にあった指摘直したこと
文字が小さい本文の文字をひと回り大きく(はみ出しや折り返しは機械的に全枚検査して0)
「AI」という言葉を連呼している台本から「AI」という言葉を消した
▲2.2%と言われても実額が分からない「年▲2,000万円」を並べて書いた
「浮いている」「1分半長い」思い入れのあった要素(凧、昔の話など)を外し、前半の繰り返しを圧縮

人の指摘は、聞いているその場では「なるほど」で終わって、翌日には半分忘れています。録音ごと渡してしまえば、忘れません。しかも、直すところまで一気に進みます。

画面も、録画してそのまま渡す

自分で気づいた不具合も同じやり方です。デッキを通しで動かしているところを自分で画面録画して、その動画ファイルをそのままClaudeに渡します。「ここで音が出ない」「この動きが遅い」「文字が切れている」を言葉で説明するより、動画のほうが正確です。Claudeは動画から静止画を抜き出して、どのスライドの何秒目で何が起きているかを見て、直します。

この画面録画、おかしいところを直して通しで動かした画面録画のファイルを、そのまま添える

言葉にしにくいものほど、録って渡すのが早い。録音も録画も、こちらがやるのは「録る」ことだけです。

やり方 2スライドは描かない。「文字のリスト」にして、AIに描かせる

Canvaでは、スライドを1枚ずつ「描き」ます。今回はやめました。スライド1枚を、文字と設定のメモにして、そのメモの束(deck_v3.json というファイル)を読んで画面にする仕組み(deck.html)を、Claudeに作ってもらいました。

これは本番デッキにある、実際の1枚です。プログラムに見えますが、読んでみると「何を、どう見せるか」のメモです。

{
  "id": "07a",
  "ch": "② 職員が報われない",
  "lo": "photo",
  "img": "assets/real/w_C8552_kaki.jpg",
  "role": "職員",
  "punch": 1, "hold": 5,
  "text": "「どうせ、\n変わらない」",
  "say": "よく聞く言葉があります。(間)「どうせ、変わらない」。",
  "key": "v2の『どうせ』を職員視点だけで復活。9/1: ストック風写真→実写(頭を掻く職員)に差し替え"
}

deck_v3.json より(スライド07a・一部省略)

lo見せ方の種類。photo は「写真の上に文字」
img背景の写真
text画面に出す文字
punch何行目を「判子」のように据わらせるか。ここでは2行目の「変わらない」
sayその1枚で喋る台本。(間)のようなト書きも書ける
keyなぜこの1枚がこうなっているか、の備考。差し替えの経緯もここに残る

この形にすると、直すのが速い。文言の修正は1行、順番の入れ替えはメモの並べ替え、1枚消すのはメモを1つ消すだけです。頼み方も簡単です。

メモが、そのまま画面になる
deck_v3.json の1枚
"text": "「どうせ、\n変わらない」"
"punch": 1
"say": "よく聞く言葉があります…"
deck.html
が描く
職員
「どうせ、変わらない」
2行目だけ、判子みたいに入れて
直すのは1行。順番の入れ替えは、メモを並べ替えるだけ。
メモが画面になる:左のメモを deck.html が右の画面にする。1行直すと、右がそのとおりに変わる
07aの2行目、「変わらない」だけ判子みたいに入れて
構成をゼロベースで組み直したい。冒頭に5つの「どうせ」を投げて、最後に全部回収する形で8月9日夜。83枚から64枚に組み直した
全編、視点を「職員」に統一して。利用者もお金も、職員の目線から語る8月18日。これが本番の構成になった
デッキの一覧表示。スライドが4列に並んでいる
一覧表示(キー「o」)。deck.htmlが57枚をそのまま並べる(写っているのは先頭の16枚)。順番の入れ替えも、抜き差しも、メモの並びを変えるだけ

決めごとを一つ。PowerPointには変換しない。8月の頭までは「画像を書き出してPowerPointにする」方式と、この方式が並走していて、片方を直しても片方に反映されず、緑の色すら食い違っていました。一本化してからは、正はメモの束、投影はdeck.html、それだけです。

やり方 3動きは、意味のあるものだけ

この方式の良いところは「動く」ことですが、動けばいいわけではありません。動きは5種類だけ用意して、それぞれに意味を持たせました。deck.htmlの中に、そのまま日本語でメモが書いてあります。

/* ---------- 意味に紐づく動き ----------
   punch: その行だけ判子のように大きく入って据わる(「どうせ」「汁だく!」「▲2.2%」)
   flip : 行が実際に裏返って現れる(「全部ひっくり返しに来ました」)
   track: 字間が締まりながら決まる。主題文用(「現場の人は、最初から優秀だった」等)
   thread: 文の下を細い糸が左から右へ走る(凧の次、「糸の先には必ず一人」)
   hand : 手書きの言葉が、書かれていくように現れる */

web/deck.html より

さきほどのメモ(07a)を、この仕組みで描くとこうなります。本番は職員の実写を背景に敷いていますが、ここでは緑ベタで。

職員
「どうせ、変わらない」
punch:1行目はふつうに出て、2行目だけ判子のように据わる。"punch": 1 の1行で指定

数字は止めません。数字はその場で増えていって、静止画では出せない緊張感を作ります。

国内市場0兆円
その中で、最大手のシェアは
0.0%
最大手
のこり 99.2% ── 中小・分散のまま
bigstat:50兆円と0.8%が増えていき、30万事業所の帯の左端に、最大手ぶんの光る一片が現れる。細くて見えにくいこと自体がメッセージ

やり方 4本物しか出さない

これは私の強い好みで、Claudeに何度も言いました。システムの画面は、本物のスクリーンショットか、本物のプログラムそのもの。ClaudeがHTMLで「それらしく」再現した画面を作ってきたときは、こう返して、不採用にしました。

全然違う。モックじゃなくて実物を出して今のデッキでは、自社サービスQaitoのデモは製品そのものの台本を、そのまま再生している。回線がなくても動く

写真も同じです。8月24日と25日、大阪の現場で撮影しました。職員インタビュー4本の音声をClaudeが文字に起こし、「ここからここまでを使う」をタイムスタンプで切ります。声の大きさを全クリップで揃え、ノイズを取る。そうしてできた証言5本が、本人の映像と肉声と字幕で、スライドに入っています。証言が流れている間、私は喋りません。

証言ができるまで
1. 撮る
インタビュー
4本
2. 文字に起こす
業務時間的には
減りました。
ぐっと減ったかな
多分、半減ぐらい
3. 使うところを切る
無駄な間を落とし、
ここだけ残す
声の大きさを揃え、
ノイズを取る
4. 証言スライド
事務作業が、
半減した。
映像+肉声+字幕
こうしてできた証言が 0 本。流れている間、私は喋らない。
証言ができるまで:撮る → 文字に起こす → 使うところだけ切る → 映像と肉声と字幕のスライドに

数字も、作りません。職員に聞いた数字は、2026年7月に全職員に取ったアンケート(回答225人)の実データです。元の原稿には「報酬が上がった」という一文がありましたが、調査では裏づけられなかったので、置き換えました。

職員に、聞きました
自分の仕事は、利用者の役に立っている
0.0/5
困ったとき、気軽に相談できる人がいる
0.0/5
この職場で、これからも働き続けたい
0.0/5
2026年7月 全職員アンケート(n=225)
svy:ゲージが少し行き過ぎてから戻る。数字は同時に増えていく

行政の文書も、スクリーンショットではなく、文言をそのまま組みます。骨太の方針の表紙をHTMLで組んで、そこに朱印が据わる。写真より鮮明に映ります。

(別紙)
経済財政運営と改革の基本方針 2026
「責任ある積極財政」元年
〜日本の挑戦を起動する!〜
国策
gov:表紙が出て1.7秒後、朱印が大きく入って、一度めり込んでから据わる

やり方 5練習の道具も、AIに作らせる

7分間、代わりに喋ってくれる人はいません。だから練習の道具を作りました。

台本はスライドの中にある

台本は、さきほどのメモの say 欄が正本です。発表者用の画面(プレゼンタービュー)にその1枚の台本が全文出て、そこで直接書き換えると、メモの束に書き戻されます。台本だけ別ファイルで古くなる、ということが起きません。

台本は、1か所にしかない
メモの say 欄(正本)
よく聞く言葉があります。よく聞く言葉があります。(間)
プレゼンタービュー(投影中)
よく聞く言葉があります。よく聞く言葉があります。(間)
読み上げ練習ページ
よく聞く言葉があります。よく聞く言葉があります。(間)
AI読み上げ音声
15版16版(作り直し)
ここに(間)を足す
台本は1か所:投影画面で1か所直すと、メモ本体、練習ページ、読み上げ音声の順に同じ直しが伝わる
プレゼンタービュー。左に投影中のスライド、右上に次のスライド、右下に台本と備考とタイマー
プレゼンタービュー(キー「p」)。左が投影中の1枚、右上が次の1枚。右下にその頁の台本と備考、「残り2:38までに、この頁へ」という時間の目安、7分のタイマー。台本はここをクリックして直接書き換える

読み上げ練習ページ

8月30日に、投影用とは別に練習用のページを作りました。頼んだことは一つだけです。

単純にタイマーがあればいい8月30日。凝った機能は要らない、と伝えた

台本の一覧と、各ページに到達しているべき経過時間、それとタイマー。経過時間は「文字数÷1分あたり390字+映像の尺」で自動的に見積もり、実際に計った時刻を入れると、その間を文字数で按分し直します。9月1日には暗記モードを足しました。全文、ヒント(各文の頭3文字だけ)、隠す(クリックで一時表示)の3段階です。出先でも練習できるように、同じものをClaudeのアーティファクト(共有ページ)としても発行しました。

読み上げ練習ページ。タイマー、台本の表示モード、想定合計と持ち時間、各ページの経過時間つき台本一覧
読み上げ練習ページ。上段にタイマー、台本の表示モード(全文/ヒント/隠す)、想定合計と持ち時間、読み速度。本文は章ごとに区切った台本一覧で、各ページに到達しているべき時刻と、その頁にかける秒数が左に出る

AI読み上げ音声

台本を読み上げた音声も作りました。移動中に聞くためのものです。作ってみて分かったことがいくつかあります。「EBITDA」をそのまま読ませると発音が崩れるので、英字は読み仮名の表(EBITDA→イービットダー、Qaito→カイト)を通す。できた音声は別のAIで文字に戻して、台本と照合する。自然な速さは1分あたり約287字で、早口の指示はほとんど効かない。7分に収めるなら台本は約2,000字が上限。頼み方は、こんな調子です。

動画の音声も入れてほしい9月1日。証言の映像はそのままの長さで挿入することになった
スライドの間、0.25秒くらいは必要詰めすぎて息継ぎがなくなっていた
毎回じゃなくていいデッキを直すたびに音声を作り直していたのを、頼んだときだけに

この音声は台本を直すたびに作り直して、9月1日で16版目です。移動中も、寝る前も、何度も聞きました。

最終版の読み上げ(16版・7分版)6分35秒

一部を切ってあります。証言の部分は本人の声がそのまま入っています。

やり方 6本番は、電波も機材も信じない

投影する場所の電波は信用しない、が前提です。

それでも、当日は焦りました。会場でType-Cケーブルにつなぐと、動画が固まることがある。手元では何十回も通っていたものが、その場では詰まる。音声の出し方を、ケーブル経由からイヤホンジャック出力に変えたら改善しました。念のため、動画7本を軽くした複製版も用意していました。準備をどれだけしても、会場の機材は当日まで分からない。逃げ道を一つ持っておくのは、AIがあってもなくても変わりません。

当日、会場で
手元のパソコン
デッキ
Type-C
会場のディスプレイ
動画
固まる
✓ 動いた
音声はイヤホンジャックから出す
ジャック → 音声
会場のスピーカー
当日:Type-Cで映像も音声も送ると動画が固まる。音声だけイヤホンジャックに逃がしたら、動画が動いた
この作り方の弱点:ファイルが重いことです。写真も動画も書体も、リンクではなく本体ごと抱えるので、持ち運ぶ複製版だけで148MBあります。Canvaのように「リンク1本で開く」とはいきません。代わりに、電波がなくても、誰のアカウントがなくても、同じものが同じように動きます。

この記事も、同じやり方で

最後に、この記事自体の作り方を。優勝した日の午後、Claudeに「記事をつくりたい」と頼みました。そこから先を、デッキと同じ仕組みで1枚にすると、こうなります。

この記事が、その日にできた理由
記事をつくりたい
Claude
材料を、自分で探しに行く
Claudeの記録
37日分のやり取りと、決めごと
GitHub(デッキ一式)
deck_v3.json / deck.html / 練習ページ
ICCの公式記事(ウェブ)
公開リハの順位と点数
手元のファイル
写真・動画・読み上げ音声・画面
eeful stories(GitHub)
記事の型と、公開の手順
この記事
37日分の年表 演出4枚 7位・1点 実画面3枚 読み上げ音声 記事の型・公開
全部が残っているから、頼んだその日に作れる。
この記事の作り方:頼むと、Claudeが記録・GitHub・ウェブ・手元のファイルを自分で探しに行き、見つけた材料が記事に集まる

この記事が頼んだその日にできた理由は、一つです。材料が全部、残っていたからです。デッキ一式はGitHubに、37日分のやり取りと決めごとはClaudeの記録に、写真も動画も読み上げ音声も手元のファイルに、記事の型と公開の手順はeeful storiesのリポジトリに。Claudeはそれらを自分で探しに行って、年表を組み、演出を抜き出し、公開リハの順位と点数をICCの記事で確かめ、画面を撮り、音声を切って、下書きを見せてきました。

私がやったのは、読んで、短く返すことだけです。「これが見にくい」「ここは省いていい」「全体的にもっと素人でもわかるようにしてほしい」「明朝体を禁止にして、より読みやすいデザインに」「これは不要」。

やり方は、スライドのときと何も変わりません。作ったものを全部残しておいて、頼む、見る、短く返す。それだけです。